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Award

平成30年度時差Biz推進賞

ワークスタイル部門受賞

豊島区豊島区

受賞理由

受賞理由

1日の乗降客が250万人を超える池袋駅を抱える地方自治体として、率先して交通機関の混雑緩和に向けた取組を実施するとともに、働き方改革の機運醸造に寄与すべく、昨年度に引き続き時差Bizに参加した。具体的には、平成29年の時差Biz期間にトライアル、同年10月に正式導入した時差勤務について、利用制限を緩和し、理由の如何を問わず、全5パターンから「日」単位での選択を可能にするとともに、全管理職を対象にタブレット端末を利用したテレワークを実施。いずれの取組も業務に支障が生じないよう工夫を重ね、住民サービスの低下を招くことなく働き方改革を実施できた。

豊島区

官公庁と聞けば一般に「横並び」の意識が強いと認識しがちだが、豊島区はそれには当てはまらない。昨年の時差Biz参加を機に、さまざまな制度を整備、実施。所内に向けて積極的な「改革」を巻き起こしてきたからだ。もちろん、自治体として適切な行政サービスの提供を第一義とするという姿勢は揺るぎないが、それを支える職員たちが快適に働くことのできる環境づくりも重視しており、それは今後も続いていくという。今夏、同区は前年の時差Bizをさらに進化させた施策を取り入れ、トライアル実施した施策は正式な制度化も視野に入れている。今までの、そしてこれからの豊島区のチャレンジについて、総務部人事課小野寺課長から話を伺った。

時差Bizを続ける理由

豊島区
総務部人事課長
小野寺 悠太様

時差Bizへの参加をきっかけに、職員の「働き方」への積極的な改革に取り組む豊島区。変化を恐れず、むしろ進んで「進化」を遂げていきたいという気持ちが見える。時差Bizに関わる諸々の活動を主導してきた人事課内においては、一層その気運は高い。
「例えば昨年7月の時差Bizで試行された『月』単位の時差通勤は、その年の10月には正式に制度として導入されました。これだけのスピードで制度改正がなされたのは、より良い職場にしたいという職員たちの気持ちと、担当する人事課職員の強い熱意があったから。その熱意を持って周囲を巻き込み、新しい取組に向き合っているのです」と語る小野寺課長。
このような環境が生まれた要因の一つには、時差Bizへの連続参加があるという。何かを「継続して行うこと」で、新たな変化を「定着」へと結びつけていくことが可能となり、そこからさらに新しい変化を求める気持ちが生まれてきたと言えるからだ。今後も時差Bizへの参加を是非続けていくと言う。
「昨年、今年と連続して賞をいただいたことで、私たちの活動は一定の評価をいただけたと考えています。今後も、自治体としてとどまることなく進化し続けていく姿を発信し続けたいですね」

具体的な取組内容

昨年10月に導入した時差勤務制度では、7:30~9:30まで30分刻み全5パターンの出勤時間を月単位で自由に選択できる体制を整えた。さらに、平成30年度の時差Biz実施期間には「より気軽に時差通勤を『お試し』できるように」と理由を問わず「日」単位での利用を可能、申請手続きの一部を簡略化した。その結果、期間中に「時差勤務を一回は利用した」という職員は前年度の約200人からおよそ700人へと飛躍的に伸長した。これは、時差勤務対象者の約半数にあたる人数だ。
同時に、昨年度から重点目標としていたテレワークもトライアルで実施。すでにモバイルPCが貸与されていた管理職を対象とし、積極的な活用を勧めた。基本、自宅での作業を行うことを前提としたものだが、約30人の管理職が制度を活用。のちのアンケートでは、その8割が肯定的な評価で、「今後正規制度として取り入れるべき」との声が多く聞かれたという。
これら施策の実施により、職員の勤務時間にばらつきは出たものの、業務上特に問題となることはなく、「全体的には好評価を得られ、成功」し、時差Biz期間を終えることができた。
「時差Biz実施後には、今回も職員からアンケートを取得しました。その意見をくみ取り、この秋からは業務上の理由があればとの条件つきで、10:00~13:00の間にも7パターンの出勤時間を設け、運用をスタートしています」(小野寺課長)

時差Bizに期待すること

豊島区

このように、豊島区の「働き方改革」に非常に効果的だったという時差Biz。その機運がより活発化していくよう、参加企業・自治体がさらに増えていって欲しいという小野寺課長。
「そのためにも、東京都には時差Bizの周知に今以上力を入れていただきたい。このような大きなムーブメントをつくることは、一自治体の力だけではできません。都という大きな括りで、時差Bizそのものを粘り強く社会に定着させて欲しいと考えています」
同区にとって、次回の時差Bizでカギとなるのは今回実施した2つの施策――時差勤務とテレワークをどのように進化させていくかという点だ。たとえば、時差勤務の出勤時間をさらに細分化する、テレワークの対象を一般職員にまで広げるなど、何らかのバージョンアップを検討中だというが、その際には、やはり「職員からの声を、大いに反映させていきたい」と考えているという。
自治体においても様々な働き方が一般的になり、豊島区が「特別な区」として注目を浴びなくなったそのときこそ、働き方改革が、ライフ・ワーク・バランスが本当に実現したときなのかもしれない。
「そんな社会が訪れたとき、『豊島区の果たした役割は大きかった』、そう言われる存在になれるよう、今後も尽力し続けていきます」(小野寺課長)

Column

「適切な勤務時間」の構築を目指して

これからの豊島区が目指すところ、それは都内23区でもっとも超過勤務の少ない区になることだ。その実現のための具体的な策も、すでに考案しつつある。1つは、1カ月あたりの超過勤務時間の上限を、45時間に定めること。そしてもう1つは、勤務間インターバル制度の導入である。
勤務間インターバル制度とは、勤務終了から翌日の勤務開始まで、定められた時間だけインターバルを置かねばならないというルール。例えばインターバルを12時間と定めた場合、諸業務により21:00まで勤務した際には、翌朝9:00以前の勤務開始は認められないことになる。これは、諸外国でも取り入れられている制度であり、ライフ・ワーク・バランス構築の助けともなるものである。
平成31年4月より労働基準法が改正となり、この勤務間インターバル制度も民間企業の努力義務として課せられるようになる。官公庁は適応外となってはいるが、豊島区は率先して時代の流れをキャッチ。その趣旨を組んで、自治体としていち早く取り入れたいとの意向を持っている。もちろん、その実践のためにはまだいくつかの課題があるが、制度導入により超過勤務の縮減も図ることを目指している。